先般、積水ハウス株式会社が東京都品川区西五反田の土地取引に際し６３億円を騙し取られた報道がありました。まさに土地取引に関する巨額詐欺事件であり、大手住宅メーカーである積水ハウス株式会社が被害を受けたということで、司法書士界でも驚きをもってこの事件は受け止められています。

　さて、被害の舞台にあった土地の登記情報を見てみますと、もともとの所有者は女性であり昭和５０年に相続で当該土地を取得しています。その後、土地所有者とＩ株式会社との間で、平成２９年４月４日に売買予約契約がなされたとして所有権移転請求権仮登記がなされ、その同日に、Ｉ株式会社と積水ハウス株式会社との間でさらに売買予約契約がなされたとして、所有権移転請求権の移転仮登記がなされています。

　そして、今般、積水ハウス株式会社がその仮登記の本登記を申請したところ、成りすましの当事者による登記申請であることが発覚した経緯のようです。

　土地所有者と積水ハウス株式会社の間に入っているＩ株式会社は、平成２２年に成立した資本金１０００万円の株式会社であり、このような巨額の取引の当時者たり得たのかは大きな疑問がありますし、報道によりますと、積水ハウス株式会社は、売買予約の仮登記の段階で売買代金の９割相当額の６３億円を支払ってしまっていたとのことであり、土地取引の慣行に照らし不可解な点が少なくありません。

　 情報によりますと、仮登記の本登記の際に登記所に提出された印鑑証明書は真正な印鑑証明書であり、権利証ではなく本人確認情報で登記申請がなされたようです。 登記所は、不正な登記がなされるとの事前情報によって本件仮登記の本登記申請を受理しなかったようであり、不正事案に関する事前の情報がなければ、登記所も本件詐欺事案を見抜けなかった可能性があります。

　 本件登記申請に際し、司法書士には偽造のパスポートが提供されたようです。私も偽造パスポートを見たことがありますが、偽造であることが簡単に見抜けるようなものではありませんでした。 ただ、昨今の裁判例によりますと、当事者が真正であるか否かの第一義的な責任は、売買の当事者にあると解されていますので、宅地建物取引業の皆さんの責任は非常に大きくなるものと思われます（司法書士の責任は、あくまでも二次的なものであるとされています）。

　 この積水ハウス株式会社の事案の特徴は、相場よりかなり安い物件であること、抵当権等の負担がない物件であること等、一般的に詐欺事案の特徴と合致する点があるようです。やはりこのような巨額取引の場合、物件の確認だけではなく、売主の住所地の確認等の周辺情報調査の重要性がより高まるものと思われます。

暦のうえでは秋ですね。８月も下旬になってやっと真夏の暑さが戻って来たようですが、７月の猛暑に８月は毎日々雨が続き日照不足による野菜などの収穫にも影響が出ているようです。夏休みに旅行を計画された方も多いと思いますが、雨が降ると気が滅入るのは私だけでしょうか。

　賃貸アパートの建設が衰えをしらず、供給過多になっていると思われる地域でも建設が進んでいます。銀行も低金利で収益力が落ちているので、これを機会に積極的に融資しているようです。人口の減少が社会問題になっていますが、神奈川県も２０２０年から人口が減少して行くと予測されています。特に若年世代の減少が大きな問題でこの先入学や就職の為にアパートを借りる人が減少して行く訳です。

　アパートを建てる側は、更地でいるよりはアパートを建てて評価額を下げ、銀行からの借入金を相続財産から差し引く節税が目的の方も多いようですが、建てたアパートに入居者がいなければ何にもなりません。サブリース契約をする貸主も多いでしょうが、実際には見込みより入居者が少なければ減額出来る条件になっているケースが多いと聞いていますし、需要と供給のバランスが崩れている地域では新築でも間取りや環境が良くなければ、満室にするには相当の日数と努力が必要のようですし、既存のアパートは間取り環境に築年が加わって来ますのでなかなか入居者は集まりません。これからは学生向けアパートなどは少子高齢化時代の今、空室が多くなると見込まれますし、人口減＝世帯数減となる訳でファミリー向けも苦戦する事になると思いますし、逆に高齢単身者向けのアパートの需要が増えて来る可能性もありますが、賃貸経営はますます競争が激化して行くのではないでしょうか。

　今、地域密着型の賃貸を主とする「街の不動産屋」は消費者の要望に対応しきれず、消滅して行くのではないかと言われています。商店が姿を消しスーパーやコンビニがその穴を埋めて行くのと同じで、我々小規模な「街の不動産屋」は大手不動産企業やフランチャイズ企業に仲介が集中し、生き残るのが難しくなり、その隙間を大手やフランチャイズ企業が埋めて行くと言うのです。
　たしかに地域密着の我々は集客では大手不動産企業やフランチャイズ企業には到底かないませんが、地主や大家さんとは大手やフランチャイズに負けない信頼関係が有ると思いますし、代が変わっても継続して信頼を得る努力を怠らず、良き相談者となり大手やフランチャイズとうまく住み分け、時代の変化に対応し強かに生き残るのが「街の不動産屋」ではないでしょうか。

　さて、事業協同組合では創立３０週年を記念して日帰り研修旅行を今回は１泊２日にて実施いたします。行先は皆さん何度の行っていると思いますが群馬県草津温泉です。有馬（兵庫県）下呂（岐阜県）と並ぶ日本三名泉の一つで、複数の源泉があり自噴量は日本一を誇る温泉地です。詳しくは８月の定期配布にてご案内しておりますが、日頃の激務から解放され疲れを癒し親睦を計るためにも是非ご参加ください。

　残暑きびしいですが、夏バテや熱中症にならぬよう水分補給等体調を整え９月を乗り切っていきましょう。